『華國ノ史』
※以下本文と関係なし

 「希望の剣」

 古代では多く魔法の詠唱文句を刻んだ武器があった。

 今にその秘法が伝わっていないのは当時の魔法使いが秘密を持ったまま消えて行ったからであったとされる。


 それは簡単に人の命を奪いすぎる為に、

 またそれを奪わんと戦争が止むことが無かった為である。


 この剣には以下のような伝説があった。

 
 ~正義の王~
 
 この王は初めは一介の鍛冶屋であった。


 巨大な黒が大陸を覆った時、彼はそれを切り裂く一振りの剣を作る。


 多くの人が暗黒時代を嘆き、憂いたが時代を呪う事しかしなかった。

 
 その中で、もがき苦しんででも剣を叩き続ける男に神は微笑んだ。


 天よりの使者は王に相応しき勇気と知恵を備えた鍛冶屋に祝福の言葉を送る。


 男はそれを剣に吹き込む様に刻むとその剣は淡い光を放った。


 その神々しい光は、見た者達の荒んでいた心を照らし、皆は彼に従った。


 暗き雲は光の剣で割かれ、黒は銀の光に恐れをなし海の果てへと逃げたという。


 剣に裏と表に刻まれている古代文字は以下の通りである。


表「目を開き光を求めろ
   それが例え常闇であろうとも」


裏「それが例え醜悪な物であろうが
    私は目を閉じる事はしない」

 
 表は天の、裏は男の誓いの言葉とされている。

 男は多くの絵に書かれ、今でも幾多もの教会に飾られている。


 偽の剣が作られ出回っているが、銀の光を発するのはこの神聖な剣だけである。

 
 人々を高揚させる「鼓舞の魔法」を発動する剣は戦場にいる兵士達に自信を与える、

 しかし、逆を言えば舞い上がらせるだけの魔力があった。


 故にこの剣は時が来るまで隠され、守られて来たのだろう。


 その意志が今も反映されている事を願う。

 

【残された物の声】より
 著者 ケイロン

 

 
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