『華國ノ史』
 多くの死者を弔い、感傷に浸る事も許されなかった四人は急ぎ王都へと向かった。


 途中、港街である赤い海鳥の巣に立ち寄ると多くの軍艦が停泊しているのが見えた。


 戦う事の出来なかった兵士達は魔法都市壊滅の報を聞いたのであろう酒場でくだをまいている。


 クラッシュから伝言を受けていた門番がセブン達に駆け寄って来た。


 早急に王都へと向かって欲しいとの事である。


 体力自慢の毛長馬も流石にへばり、馬車に乗り換えた四人はその揺れる車の中で疲れ果てたのであろう死んだように眠った。


 途中途中で村に寄り食料を補給し、

 宿にも泊まらずに進み続けた。


 馬車の中では賢者ケイロンから渡されたアイテムをセブンが手に取っていた。


セブン
「これって何だろう?」

 セブンに渡されたのは革で出来たグローブだった。


 指先と指の第二関節部に金属製のガードが付いている。


 セブンはそれを手にはめてみるが特になんといった事は無い。

ミニッツ
「格好良いな、失われた魔道具だろ、魔力こめてみ?」

ウルブス
「待ちなさ…!」

「ブオーン」
 
 ウルブスの警告は間に合わず、荷台の上のものは全て弾かれ道に散乱した。


 セブンの回りには球状の魔力で作られた壁が作られていた。


 馬は騒音に驚いて、いななき「どうっどう」と手綱を引く行商人は四人を睨みつけた。

セブン
「すいません、弁償します」

セコンド「いててて」

ミニッツ「迷惑な手袋だな」

 二人は地面に腰を打ち付けて言った。

 ウルブスもその被害者の一人であった。

ウルブス
「一般魔法の魔法障壁ですな」

セブン
「クラッシュに習った無属性魔法だ。

 でも死神のに似てるや」

ウルブス
「一般魔法よりも少し強力で、

 なおかつ無詠唱で生じる事ができますな」

ミニッツ「いいな~それ」

セコンド「じゃあ俺らのは?」

 ミニッツとセコンドは木で出来た杖を拾い上げた。

 一方には女神が、もう一方は狼の彫刻がなされている。


ウルブス
「ケイロン殿の本に書かれている物ですな。

 確か魔力を貯める事ができる霊樹で出来ている。

 希少な樹で有名ですよ」

ミニッツ&セコンド「そうか」
 
セブン
「魔力が弱い二人にはうってつけだね」

ミニッツ&セコンド「うるせー」
 
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