『華國ノ史』
 三日月城塞で一番構成員が多いのが華護義勇軍であった。


 殆どの弓兵は彼らが請け負い、城塞を機能させるのには必要不可欠な要因となっていた。


 様々な民族と種族で構築された彼らから信頼を勝ちとっている男がいる。


 軍に属さず大陸中をさ迷う旅人、冒険家。


 多くの村で魔物を討伐してまわり、トラブルを解決する知識人でもあった。


「剛剣の勇者・エイブルス」

 
 そう呼ばれる彼は、巨大な体に上質な皮の鎧、両腕には鋼のガントレットをはめていた。


セブン
「変わった剣ですね?」


 セブンがそう言うエイブルスの両手剣は長く、そして剣先が扇のように広がっている。


エイブルス
「剣の重心が剣先にいくから遠心力が働くのさ、見てろよ」


 エイブルスは背中のバックラーから剣を外し地面と垂直に構えた。


 ズドンッと右足を踏み込みその長剣を横に払って見せる。


 地面の土が剣の風圧で舞い上がり、ブオンと大きな音を立てる。


 横に立っていたセブンの前髪が風で揺らされた。

セブン
「凄い!

 こんなの食らったら一撃ですね!」


エイブルス
「どんな鎧だろうと中身はグシャグシャさ、ほれ持ってみろ」


 エイブルスは軽々と片手で剣をセブンに手渡す。


セブン「ぐわっ重い」

エイブルス
「山脈の王族、雪狼族に認められて渡された剣だからな、

 並のもんじゃきついだろ?」


セブン
「ですね、僕には装備出来そうにないです」


エイブルス
「前衛は俺みたいな戦士に任せとけ」


セブン「頼りになりますね」


エイブルス
「逆人とかいう奴にも早く会ってみたいぜ、強いんだろ?」

セブン
「魔法使いの天敵なんですよ」

エイブルス
「ならそいつらは俺やジェノスに頼れよ、お前等魔法使いばっかりが戦場の主役じゃないんだからな?」


セブン
「ここに来て驚きましたよ、魔法に頼らないのにみんな強くって」


エイブルス
「ここの軍団長レベルの奴は実力者揃いだからな、

 なんでこんな西に配置されたのか不思議だぜ」


セブン「確かに…本当ですね」

エイブルス
「ま、秘密兵器って所だろうな」

セブン「…」

 セブンはエイブルスの考えが少しどこかに引っ掛かった。
< 147 / 285 >

この作品をシェア

pagetop