『華國ノ史』

帰還、後、出陣

 東の関所では華國を代表する二人の王子が快進撃を見せていた頃、

 煌皇国将軍ボーワイルドは煌皇国領最南端の港街に帰港していた。


 出撃時兵数は約二万であったが、海峡越えと魔法都市攻略で無事帰還出来たのはおよそ一万であった。


 多くの被害を出し、若き将兵達は陰口を叩いたが、

 皇帝は港街に自ら出向きこれを称賛する。


「皇帝ブレイランド」

 好戦的であり、支配欲が強く、自分の代で大陸統一を成したいと考えを持つ策略家。


 第四皇子であったが皇帝の座に上り詰める程の人物であった為に、

 今回のボーワイルドが成した奇襲における重大さを認知していたのだ。


 ブレイランドは疲れ果てていたボーワイルドが率いる師団にと、

 多くの食料と酒を持って出迎えた。


ブレイランド
「よくぞ帰ったボーワイルド!

 報告は受けている。

 これで敵は北にも兵力を割かねばなるまい!


 しかも一番危険な時期での渡峡を成功させるとは、全くもって見事だ。


 兵力を奪う事は出来なかったが、国力に大打撃を与える事が出来た。


 これで数年すれば奴らの軍事力は落ちるであろう。

 そして更にドラゴンをも葬ったと聞いた。


 ボーワイルド、お前こそは真の名将よ!

 
 お前にドラゴンスレイヤーの称号と煌陽金帝(コウヨウキンテイ)勲章を与える!


 領地を増やし、この宝物を与える。


 お前なら使うべき時を知っているだろうからな。

 以下、ボーワイルドと共に出撃した兵に青銅勲章と功績に応じ金貨、銀貨を与える。

 皆よくやった!」


 ボーワイルドはドラゴンを倒したのは自分では無いと言おうとしたが、

 回りの熱を冷まさぬよう言葉を飲み込んだ。


 最高位の勲章を与えられ更にまた秘宝を与えられたのであった。


 帰還した兵は皆自分達の成し遂げた事を皇帝が賛辞した事を誇りに思い、

 厳しかった遠征の疲れは報奨への期待とで幾分か軽くなった。


 しかしボーワイルドの心はここにあらず、更なる戦いへと向いていた。


 それは急を要し、未だボーワイルドは自らが描いた作戦の真っ只中にいたからである。


 自分の考えが正しければ華國は山脈の制圧を完了している頃であろうと。


 この時またしても華國の動きはボーワイルドの頭の絵の通りに動いていたのっだった。

 
  
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