『華國ノ史』
 将軍ボーワイルドは出撃命令を受け一週間で軍を再編成し再度艦に乗り込んだ。


 煌皇領の海域を走り、海岸に船を停泊させる。


 大陸内部へと行軍し、出撃より5日で山脈西の関所前にある城に入城する。


 出迎えたのは共に西の関所を破らんとする将軍、フェネックである。


 フェネックは騎馬戦を用いた機動戦略が得意であり、

 またボーワイルドとの相性が非常に良かった。


ボーワイルド
「てっきりキュバインだと思っていたが」


フェネック
「私ではご不満ですか?」

ボーワイルド
「いや、貴殿は信用を裏切らん。

 信頼している」

フェネック
「光栄です。

 しかしお疲れ様でした。

 大功でしたね」

ボーワイルド
「なに、私がやらねば誰かがやっていたさ」

フェネック

「やれませんよ、最悪の時期に魔の海峡を渡る者なんて」


ボーワイルド
「無茶だったとでも?」

フェネック
「あなた意外ならね。

 我が自慢の騎馬隊五千、俊足を誇る歩兵五千。

 合わせて一万、あなたの指揮下に入る事をお許し下さい」


ボーワイルド
「五千にまで騎馬を増やしたのか?

 大したこと苦労であっただろう」

フェネック
「私財を投げ売りましたよ、命を失えば持っていても意味はありませんから」


ボーワイルド
「私の領土内より貴殿の親族にささやかな援助をさせてくれ」


フェネック
「宜しいんですか?」

ボーワイルド
「領土が増えたのでな、それを守る為にも我々は勝たねばな」


フェネック
「では安心して指示に従います。

 貴方と共に戦える事を誇りに思います」


ボーワイルド
「私もだ。

 早速作戦会議を開く」

フェネック
「既に人は揃えて待機させてあります」

ボーワイルド
「流石は烈風の称号を持つ男だ」

フェネック
「何でも奮起、名将に続き3つ目の称号を得たそうで?」

ボーワイルド
「情報まで早いとはな、ハッハッハ」


 ボーワイルドはこの男が他の将軍よりも話やすかったし使い易くもあった。


 若く、聡明であり、素直なフェネックはボーワイルドの考える以上の働きを常に見せた。


 ボーワイルドは常にフェネックを褒め称えていたので、

 今回の人事となったのであろう。


 その為、ボーワイルドに傾倒していたキュバインとは幾分不仲ではあった。

 
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