『華國ノ史』
 細く長い道には大きな石が至るところに転がっている。

 
 主要都市を結ぶ大街道まであと少しだが、セブンは疲れていた。


「足痛いっ足痛いっ足痛いなー!」


「おっ足痛いの歌だね?」


「教えてあげるよ、さんはいっ!」


「さんはいっ?ああ、足痛い足痛い足痛いなー」


「違う違う、足痛いっ足痛いっ足痛いなーはいっ」


「足痛いっ足痛いっ足痛いなー」


「それ!」

 二人は交互に歌いながら坂道を抜けた。


「よしっ抜けたぞ、あれが大街道だ。

 馬車も沢山通ってるから歩かずに済むぞ」


「どこにも馬車見えないけど」

「…」


「馬車無いっ馬車無いっ馬車無いなーはいっ」


「悪かったっ悪かったっ悪かったよー」


 仕方無いので二人は歩きながら馬車を待った。


 暫くするとピエロが言った通り商人の一団が通りかかった。

「とまれ、とまれ」

「なんだ?なんで道化が?」

「乗せてくれ」

「ダメダメ、商品でいっぱいなんだから」


「嘘だろ?金取る気か?

 こう見えて内部調査員だ。港街まで乗せてくれ」


「そんなふざけた格好で?信用できんな盗賊じゃないのか?」

 
 ピエロは懐からナイフを数本空中に放り投げた。

 
 それらは空中で数回転し、操られているかのように馬の手綱を引く商人の首もとを舞った。


「盗賊でも内調でもどっちでもいいぞ?」


「ようこそ!キース商団へ

 魔法使いの内部調査員殿」


「それで良い」

 ナイフは商人を離れピエロのコートの内側に収まった。


「ナイフワルツって魔法だ、ナイフ以外でも可能だよ?」

 
 セブンはトールから貰ったナイフを空中に投げた。

 
 それは空中で数回転しピエロ鼻をかすめて落ちてきた。

「難しいや」

「危ねーなっ!

 まあ、無表情でやる所は俺そっくりだけどな」

< 16 / 285 >

この作品をシェア

pagetop