『華國ノ史』
 百年に渡って炎を吸い込み続けた火吸石から無尽蔵に吐き出される火はは止む事無く、

 セブンが作り出した土筒から勢い良く吹き出し続けていた。


 対する煌皇側は水壁でこれを防ぎ続け、蒸気が蔓延する。

 
 視界を奪われたセブンが城壁外で異音を耳にする。

 
 それは空を切り裂く無数の悲鳴にも似た音。


ジェノス
「マンドゴラだ!全員耳を塞げ!」

 
 ジェノスは大声で叫ぶと城にいくつもの鋼鉄の巨大な矢が突き刺さった。


 槍程もある矢は煌皇軍の放った攻城兵器であった。


 老朽化した三日月城塞の壁に突き刺さり、音を立てて外壁を崩していく。


 しかし恐ろしいのはその矢尻にマンドゴラがくくりつけられていたのである。


 根の部分が人の形をした植物で、地中より引き抜くと奇声を発し、

 その叫び声を間近で聞いた者は即死すると言われる魔法植物であった。


 華國軍は全員耳を塞ぎ視界に続き指揮系統が麻痺する。


 特に苦しんだのは耳の発達した華護義勇軍のコボルト隊であった。


 彼等は後方に下がっていたが苦しみのあまり地に伏せる。

 
 次第に植物の叫び声は収まり、ジェノスやウルブスが一瞬でマンドゴラの頭を握り潰していった。


ジェノス「こっちは三体だ」

ウルブス「こちらは二体見つけた」

ジェノス
「くそ!俺が調べて見つけたのは六体だぞ!あと一体隠し持ってやがる」


ウルブス
「全員城壁に張り付け!まだ矢が来るぞ!」

 
 耳が回復した華國軍は鋼鉄の矢を避ける為に城壁内側に集合しだした。


 セブンは果敢にも以前として城壁外に立っている。


セブン「あれは?」

 
 セブンは集中の魔力で矢をかわしつつ更なる異変を感じていた。

 
 それは城壁の中でも起こっていた。

 
 次々に倒れていく華國軍。

 
 それは眠気に耐えられず崩れていくようであった。

 
 城塞上空には巨大な蛾(ガ)が鱗粉(りんぷん)を撒き散らしていた。

    
ミニッツ
「微睡みの大蛾…精霊だ!」
    
セコンド
「口を覆え!吸い込むと眠るぞ!」

 すかさずカトリが風魔法を使う。

カトリ
「風よ逆巻け!天へと吹き上げろ!」

 
 カトリの魔法で風が起こり鱗粉は上空へと巻き上げられた。

 
 そこへボルト亡命軍女団長スピアが槍を投げる。

 
 それは見事に大きな蛾に命中し、蛾は落ちながら泡の様に消えた。

 
 しかし、最早これ以上の交戦は無謀にも等しかった。
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