『華國ノ史』
 梯子を抱えた煌皇兵が橋を渡って来るのが見えた。


 足場が少ないので一度に攻められる数は決まっている。


 その為、三日月城塞側は非常に守り易い形となっていたが、如何せん数の差が大きかった。

 
 先程の戦闘での被害数。

 
 華國側死者四十名。負傷者五十名。

 
 生活支援だけをしていた者を抜き、まともに戦えるのは兵士数は八百名程であった。


 対する煌皇軍死者三千名、負傷者五百名であった。


 死傷者だけで数えれば百倍の戦功であったが、以前として兵力差は大きかった。


 しかし、ここでも華國軍は善戦を行うのであった。


 義勇軍の勇者エイブルスはことごとく梯子を砕き周り、逆人と城壁での一騎討ちを制した。


 片手で巨剣を振るうその様に敵は恐れをなした。


 傭兵団達は流石は歴戦の戦士であり、煌皇軍を圧倒した。


 中でもジェノスは短剣を二刀使っていた為、セブンと勘違いされ狙われるが全て返り討ちにする。


 この時、顔の右に深い傷を受けるが、サジの祈り、フィナレの力により戦線に復帰する。


 そのサジ率いる教会騎士団の実力は今まで知られていなかったが、

 ここで真価を発揮する。

 
 彼らが祈りと呼ぶ神聖魔法は傷ついた兵を回復させ、

 その剣の腕も確かな物であった。

 
 ボルト亡命軍は必死の抵抗を見せる。

 女戦士であったスピアは腹部に矢を受けても尚、奮戦を見せる。

 
 スピアを庇うように周りの戦士は猛然と迫る敵を城壁の外へと落とし続けた。


 全ての兵士が一丸となり日が暮れ始める。

 
 ここまで抵抗出来たのはセブン達の存在があったからであろう。

 彼等が戻って来れば敵は再度、引く。

 
 そしてここで、セブン達は前線に復帰する。

 
 魔力は回復していなかったが彼等は強かった。

 
 セブンとウルブスは文句無しに強く、カトリ、ピエロもまたそれに続いた。

 
 クロネは自分が生み出した武器の威力に自身も驚く程であった。

 
 戦闘開始より九時間。

 
 その間戦い続けであった両軍に明らかに疲れの色が見える。

 
 日が落ちるとその兵力差に華國軍は打ちのめされた。

 
 かがり火の数が未だに迫り来るであろう敵の数を物語っていたのだ。

 
 セブンは悔しかったが、総員退却の合図を出す。

 
 セブンは全ての魔力を使い切り、土魔法で橋を落とし、退却を開始する。


 しかし、セブン以上に悔しがっていたのはボーワイルドであった。


 たった千程度の兵に足を止められ、兵力を削られ、橋を落とされた。


 秘宝を奪われ、大した戦果も得られなかったボーワイルドは怒りに震える。

 
 これ程までの惨敗は軍に入ってからも味わった事が無かった。

 
 谷を渡るのに時間が掛かるであろう事、魔力を回復されるであろう事を考えると進軍は難しくなったのである。

 

 

 
 
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