『華國ノ史』
 セブン率いる三日月城塞守備隊は撤退後、散々に打ちのめされた。


 後方に突如現れた騎馬軍の決死隊に退路を絶たれていたのだ。


 騎馬を多く持たず、怪我人の多い三日月城塞の戦士達の退却の足は遅かった。


 その間に煌皇国五大将軍フェネックが大陸西の海を越境し、

 海岸沿いの華國拠点を突破。


 山脈北側より回り込み、セブン達を待ち伏せしていたのだ。

 
 この時、セブン達の部隊はボーワイルドにより、第一級要注意対象とされていた為である。


 少数ではあるが確実に叩かねばならぬと考えたボーワイルドはフェネックに絶対全滅を命じていたのであった。


 西の関所である三日月城塞より王城まで三つの要塞の内、最も南に位置する城には煌皇国とフェネックの旗が翻っていた。


 これを見た西の関所より撤退したセブン達は驚いた。


カトリ
「城から煙が!それにあの旗!」

ウルブス
「烈風のフェネック率いる大地を揺るがす騎馬軍…

 セブン、退却を!

 奴等は城にこもるような部隊ではない!」

 
 しかし、ウルブスの助言は間に合いはしなかった。

 
 地を震わせ、煙を巻き上げ走る騎馬軍が奪われた華國軍要塞から突如現れた。


ウルブス「罠だ」

セブン
「退却、何処へ?

 南からはボーワイルドが!」


クロネ「北西へ!」

セブン
「北西…水晶山へ?」

カトリ
「このままじゃ踏み潰されるぞ!」


ウルブス
「山なら騎馬の理は無い!急ぎましょう!」

セブン
「分かった!全員北西へ!

 水晶山で迎え撃つ!

 馬を一頭借りる。

 ウルブス、ここの指揮を!

 カトリ、クロネ、双子は奴らの馬を潰してくれ!

 皆、行け!

 必ず戻る」

 そう言うとセブンは馬に股がり単身フェネックの軍勢に向かって行った。


クロネ「セブン!」

カトリ「クロネ、よせ!」

ウルブス
「ええい!

 もう遅い!

 急ぎ皆固まって走れ!」

 
 セブンは折れる事を知らぬ頑固者を引き抜き、馬の速度を早める。

 
 小さい頃に牧場で育ち、ピエロと旅をしたセブンは馬を操るのも上手かった。

 
 されどたった一騎。

 
 たった一人で五千もの騎馬軍に立ち向かっていったのであった。

 










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