『華國ノ史』
煌皇軍の五柱の一つ「疾風」
人馬一体となり、平地を駆ける。
フェネック率いる騎馬軍はあらゆるものを踏み潰して来た。
戦場ではその機動力を生かし敵の背後に周り、大きな戦いでは必ず戦功をあげていた。
その突進力と破壊力、速度は烈風の異名に相応しい物であった。
フェネックが誇るのは騎乗能力と武力だけでは無かった。
猛る騎馬隊を思いのままに操る事が出来るのだ。
それは日々の連帯運動訓練の賜物であり、戦場を上空より見下ろしたかのような戦術の組み立て、
それが彼の才能であった。
彼が指示を出せば旗が上がり馬群はうねり、
剣を抜けば一つの意思を持った生き物のように騎馬軍は敵を嵐に巻き込む。
捕球路すら断った彼等は凄まじい速力で華國領内を駆けた。
海岸の要塞を飛び越えると少数の志願者を送り出した。
彼等は命と引き換えにセブン達を痛め付けた。
残りの者は全て王都手前の要塞を見事に攻略する。
海岸で奪った華國側の旗を掲げ少数が突撃、門を死力を尽くし開け放ち続けた。
そこに流れ込むフェネック本隊。
制圧した要塞内でセブン達を今や遅しと待ち構えていたのであった。
そんな彼らに一騎駆けを行う若き命知らずな華國の兵士がいた。
フェネック
「一騎駆けか!
魔法使いに違いない!
今はまだ魔力が満ちているはずだ!
下手に手を出せば食い破られる。
奴を無視し敵の本体を叩く!
全軍!我が剣を注視せよ!」
フェネックはセブンが強者である事を察知し、
剣を引き抜き切っ先を高く掲げる。
その剣をフェネックの後続部隊が見つめた。
対するセブンは馬上より魔法の詠唱を始め、
龍魔法であるフレイムカノンをフェネックの一団に放つ。
フェネックは剣を左右に振り、軍を二つに割った。
被害を最小限に留めると猛烈な勢いでセブンとすれ違い、走り退却していた三日月城塞防衛軍に襲いかかった。
セブン
「行かせない!」
セブンは馬を即座に返し、再度魔法を詠唱した。
煌皇軍兵士
「フェネック様!後方より光弾多数!」
フェネック
「やはり奴が!鬱陶おしい奴だ。
攻撃中止!拡散しろ!」
フェネックは剣を小刻みに降った。
セブンが放ったのは魔力の弾を無数に打ち出す初級魔法マジックアロウを強化したマジック・ハンドレットアロウであった。
大魔法使いをも手こずらせた魔法である。
背後から放たれた百を越える強力な魔法の矢は、
フェネック軍を襲ったが即座に散開した為、被害はまたもや押さえられる。
セブンは逃げる仲間を援護するように魔法を放ち続けた。
その為、フェネックはやむ無く一旦攻撃を中止し、
軍を引いたがみるみる内に散らばっていた騎馬兵が終結していく。
セブンは流石に止められぬと皆に合流するし、馬を降りた。
セブン
「皆、無事か?
なんて用兵だ。
まるで巨大な怪物を相手にしてるみたいだ」
カトリ
「隊長が弱音を吐くなよ、良くやってるよ。
見ろ、また来るぞ」
フェネックの剣がセブン達を差すと、再度大地が揺れた。
セブンは大きな魔法を2つも使い、魔力が切れれば不味い事になると焦り始めていた。