『華國ノ史』
 水晶の山の魔女の名はキルキスといった。

 その齢103才。

「月の民」の生き残りだと言う。

 
 教会騎士団長のサジは驚いて言葉を発した。

サジ
「月魔法使いの一族?とうに滅んだはずだ!」

 
 それを聞いてセブン達は思い出した。

 無知なる者の宿り木にある羅針盤。

 
 それの三枚目の超特殊魔法特性の一つである月の魔法の事を。


キルキス
「正確には滅びかけている、が正しい。

 ここにいた者は皆死んだ。

 私が最後から二番目の純粋な月の民となる」

 
 キルキスが言うにはこの水晶山は南の煌皇国から亡命してきた月の民が築いたのだという。


キルキス
「細かい事はどうでもよい。

 今、そしてその先が大事なのじゃ。

 私にも、そしてお前達にもな?」


 それはセブンに向かって問いかけられた言葉であった。

セブン
「どうすれば?」

キルキス
「星の子よ、一つ約束して欲しい。

 我らが故郷。

 月の谷間の街をいつの日か訪れる事を。

 
 それを守るならば、奴等の殺意と暴力をそなたらから一時反らしてみせよう」


セブン
「出来るのですか?」

キルキス
「まだ青い、出来なければ交渉の意味をなさんじゃろ?」

セブン
「私が裏切る可能性もあるのでは?」

キルキス
「まだまだ青い。

 助けて貰っておいて、お前さんにそんな可能性があるとでも?」

一同
「無いな?」

セブン
「…まー生き残れれば」

 キルキスはセブンの性格を全てを知っているかのような口振りであった。
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