『華國ノ史』
 三日月城塞守備隊と援軍の多くがこの水晶山で休息に入った。


 キルキスはここで採れる良質な水晶を独占しており、

 近隣の村と交易を行い食料は豊富にあった。

 
 すぐ近くに煌皇五大将軍がいるのにも関わらず、

 一同は安心して骨を休める事が出来た。

 
 その理由はキルキスの隠れ家内にあった。

 
 家の中へと招かれたセブンと代表者達はある一室に案内される。


 そこにある大きな水晶球にはボーワイルドの姿がおぼろげに映し出されていた。

セブン
「ひび割れランプ通りでよく見る占い球ですか?」


キルキス
「あんなインチキなもんじゃないさ、これは魔法と科学の融合さね。

 
 水晶レンズを幾重にも重ねて、組み合わせる事で遠くを見る事が出来る。

 
 まあ巨大な水晶の望遠鏡といった所かね」

セブン
「じゃあこれは今の出来事なんですね?」

キルキス
「そうさ、どれちょっと詳しく見ようかね」

 
 キルキスは魔法と共に水晶球前の小さな水晶の筒を、

 これも水晶で出来た箱にはめたり、また差し込んだりした。

 
 すると球に映し出された像がみるみる変わっていく。


キルキス
「来たね、偵察隊かね?」

 
 球には怯えながら水晶山の入り口付近を進む煌皇の少数部隊が写った。


キルキス
「ようこそ大魔女の住む水晶山へ、ウヒヒヒ」

 
 キルキスはこれをずっと待っていたかの様に嬉々として声高に笑った。

 
 クロネはセブンにそっと耳打ちをする。

クロネ
「イメージと違う、もっとミステリアスで高貴で素敵な魔女だと思ってたのに。

 がっかり」

セブン
「十分凄いと思うけどな?」


 キルキスに会うまで興奮していたクロネは、幻想を砕かれて肩を落としていた。

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