『華國ノ史』
王都防衛戦 1日目
ボーワイルドは王華の指輪と呼ばれる林を抜け、
王都正面に全軍を配置した。
攻城兵器の準備を済ませ、配列を整えると使者を送りだす。
煌皇軍使者
「我らは栄光の煌皇国軍である。
偉大なる皇帝閣下からの言葉を申し伝える!
大陸は統一により真の平和と安らぎを得る。
その為にもこの地を、我ら煌皇国の指揮下へと置き、
更なる人の発展と恒久の和合を求めんとするものである!
その為には犠牲もいとわないものである。
しかしここにおわす慈悲ある煌皇五大将軍ボーワイルド様は。
今すぐ開城し、王を差し出すのならば。
王族は幽閉し、民の命と自由を保証し、兵士に置いても命は保証すると仰せである。
この大きな慈しみの提案を受け入れない愚かな王以下は。
崩れ行く赤に燃える都を見るであろう!」
これを聞いた華國の城壁にいる民衆の男達は皆唾を吐き、
武器で威嚇を行っていた。
使者それでも様子を伺っていた。
「しばし待たれよ!」
全ての者が城壁へと登る一人の男をみて黙った。
ブレイブリーである。
「助かった。
もとより私の望んでいる提案を出してくれるとは」
ブレイブリーの右手には大きな白い旗が携えられていた。
「皆、今は我慢の時ぞ。
もしも圧政に強いたげられた時は、我が息子を頼れ。
必ずや反旗を翻すであろう。
誠、良い國であった。
真に、良い民ばかりであった。
私は誇り高く死ぬ事が出来る。
意義のある死だ。
しばしの別れである。
さらば我が最愛の民よ。
皆に育まれたこの命、
今この時にそなた達に返そう」
ブレイブリーは城壁正面に堂々と立ち、白旗を掲げた。
皆はその姿を何度も見ていた。
華國がまだ小さく最も戦が多かった古い時代。
その時代に書かれた英雄王の絵画のそれにそっくりであった。
ここに敗者の姿はなく、あたかも軍の最前列に立ち悠々と敵を見る英雄王の姿その物であった。