『華國ノ史』
 ボーワイルドはその旗を見て初めて笑顔を見せた。


「勝った。

 予想外の事で足をとられたが、

 最後だけは、あっけなかったな?


 いや、これが通常なのか。


 東の敵を殲滅する事に集中しなくては。

 
 開城と同時に兵を捉えよ。

 場外に連れだし皆殺しだ。

 王族も全員だ。

 
 女も子供も必ず捕まえろ。

 城を包囲し誰も逃がすな。

 
 金品の略奪だけは許さん。食料だけだ、時間がないからな」


 勝ちを確信したボーワイルドは次々に指示を出していた。


 もう次の行動へと気持ちが切り替わっていたのだ。

 
 しかし、城壁の上から白旗が落ちる。

 
 すると一斉に華國の象徴である赤い旗が振られ、声が上がった。


「何が起きた!

 抗戦するつもりか?

 全員死ぬぞ?

 どいつもっこいつも!」

 
 ボーワイルドが出した使者に向けられ矢が放たれた。

 
 慌てて引き返す使者は大笑いを背に受けていた。

 
 ボーワイルドは怒り、右手を天に伸ばし降り下げた。


「もはや、皆殺しだ。

 略奪も許可する。

 
 奪ったものは好きにしろ!

 好きなだけ奪い、殺せ。

 華は全て燃やせ!

 
 歴史書も全て灰にしろ、奴らの痕跡を大陸から一掃してしまえ!


 全軍、全速前進!」


 ボーワイルドの怒りは自身でさえ押さえられようも無くなっていた。


 凱旋から後、読みを上回る事態が相次いで起こっていることに耐え難くなっていたのだ。

 時代が華國の滅亡を望んでおらず、

 自分が無力で、敗者であるような、

 それが必然的に決まっているのではないかという感覚に襲われていたからであった。
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