『華國ノ史』
 木の魔法使いイデオットと、他の魔法使いを引き連れ梯子車攻略に挑むクラッシュ。


 クラッシュ他はイデオットの警護に全ての魔力を注ぎ込んだ。


 イデオットは全ての梯子車に呪いをかけて回った。


 矢の雨を掻い潜り、今まで味わった事の無い戦場をイデオットは走った。


 煌皇軍の梯子車は次々に城壁にまで近接し、突撃を待った。


 ボーワイルドが火攻めが無いという異変に気付いた頃には手遅れであった。


 元より攻城兵器には木材が多く使われていた。


 イデオットはそれらに呼び掛けた。


「本来の姿を取り戻せ、

 根を張り、
   
   日を浴び、
    
     水の喜びを思い出せと」

 
 死んだはずの木材で作られた梯子車は次々に成長していき、

 中にいた煌皇兵を押し潰しながら巨木と化していった。

 
 クラッシュは気を失ったイデオットを抱え助け出すと、

 反対側の城壁へと急いだ。


「この混乱ならば体制を立て直すのに時間が掛かる。

 ならば防衛は一側面のみ」

 この展開には流石のボーワイルドも舌を巻く。


「やはり私は間違っていなかった。

 魔法都市を早々に滅ぼしたのは理にかなっていたな」 

 
 しかしそれでもボーワイルドの猛攻は止むことは無い。

 
 正面ゲートに煌皇の魔法使いが集められていたのだ。


「何も華國だけに魔法使いがいるのではない」

 
 煌皇国から呼び集められた突破力に特化した者達が開戦二日目夜前に華國王都の正面門を破ろうとした。

 
 しかし、これもイデオットにより、樹の根が張り巡らされていた。

 
 クラッシュは医療魔法使いの魔力全てをイデオットに回し、

 防ぎきったのである。

 
 民達が集めた木材のバリケードと融合した樹の根は思いの外強く、

 なかなか燃えずに耐えきった。
 
 
 ここに来てボーワイルドな場内に好敵手がいると気付いたのである。


ボーワイルド
「クラッシュか?またはケイロンか?

 どちらにせよ厄介だな」

 
 ボーワイルドは即座に次の策を練らねばならなかった。
< 211 / 285 >

この作品をシェア

pagetop