『華國ノ史』
王都防衛戦 三日目 夜
日が落ちたのにも関わらず、両国の命運を掛けた戦いは続いていた。
正門を破れなかった煌皇軍は尚も正面に全軍を集結。
その理由は華國を守護する為に来た古い盟友達が現れたからである。
華國の歴王達は人種独自の文化や風習を尊重してきた。
それ故に軍事国であっても永い時を経て発展を遂げる事が出来たのである。
そして、その盟友達とは精霊であった。
多くの精霊は歴代の華國王によって助けの手を差し出された者達であった。
誰もが忘れていた恩を返すべく参戦した精霊達には数で勝る煌皇軍も手こずりを見せる。
だが、ボーワイルドの策は成っていた。
一次、二次の作戦で落とせれば良しとしたが、
彼はその2つをも踏み台とした三次作戦を決行していた。
排水口からの突撃。
それも正規軍で精鋭を使うという熱の入れようである。
問題は異常に誇り高い煌皇正規兵にあった。
決して誇り高い軍人が攻略するのには相応しく無い場所であった。
やはり、これには多くの兵が渋りもした。
死ぬ場所にも価値を見出だしたいからである。
しかし華國の生活排水口は都市の規模からして相当な容量であり、
十分なまでに攻略する価値があったのだ。
華國の守りは厳重ではあったが、正門の様に塞ぐ事はしていなかったのだ。
籠城戦ともなれば衛生面にも気遣うのも当然であった。
されど煌皇軍は精鋭を送り続けた激闘の末、
三日を費やしこの排水設備から場内への侵入に成功する。
表の喧騒は全て虚実であった。
しかし失われた兵数四千。
ここまでの被害は考えもしなかったボーワイルドはこの三次作戦、
不要とも考えたが攻略初日から一応の実行をしていたのだった。
ただこの作戦はボーワイルドからしても気兼ねしすぎだと考えていた。
兵力差等を鑑みれば、包囲したその日に降伏するであろうと思っていた。
その考えは今までの戦歴を見ても当然の結果だったのである。
ボーワイルドの人生で二度目、歴史上でも類をみない力の差、
ましてやほとんど民兵で結成された抵抗戦は考えられなかったからである。
通常の軍ならば降伏したであろう。
しかし、華國側は民兵中心の防衛兵であったからこその潔さの欠片も、
戦況を読み諦めるという事もしなかった。
もしくは出来なかったのかもしれない、
彼らは煌皇からすれば醜悪なまでの抵抗を続けた。
レンガを投げ、自らの家に火を放つ。
致命傷を受けた者ですら目を見開き門を押さえこんでいる。
攻める煌皇軍すらも哀れに思う程に。
華國王、ブレイブリーは鎧に着替え、剣を抜き、王城に立て籠った多くの者と最後の時を迎えようとしていた。
朝日が城の窓からこぼれ、最後の日が来たと皆は思った。
ブレイブリーは静かにその門が叩かれる時を待った。
しかし、その扉を叩いたのは煌皇の者では無かった。
クラッシュである。
クラッシュ
「外を!外をご覧下さい!
生きていました!
まだ戦えます!
兵は息を吹き替えし!
煌皇軍は狼狽しております。
我が王よ! 騎士が。
若き騎士が戻って来たのです!」
ブレイブリー
「リンスか?それともトリートか!」
クラッシュ
「いえ、星です。
新設の騎士団長。
華龍王虎隊!
星の魔法使いセブンです」
『名将は時代を作れない、
時代が名将を生むという。
しかし、英雄は時代をもねじ曲げる』
これはボーワイルドの言葉であった。