『華國ノ史』
 キュバインは単独東の渓谷で攻勢を掛けた。


 それは恩師であったボーワイルドからの報告を受け、

 その元へ参じる為であった。


 自軍全員突撃で突き進んだ中に紛れ込んだキュバインはリンス、トリート、華國精鋭を尻目に単純な武力で見事に横脇を突破する。

 
 渓谷出口付近までの防衛拠点をも至極強引に突破して見せた。


 これは後に誰もが虚実だと言っている。


 違うルートを辿ったのではないかと。


 しかしこれは事実であった。


 前線に精鋭部隊を集結していた華國軍後方部隊は油断していたのだ。


 突破した所で孤立する事を考えれば、

 そんな無謀な事をする者などいないであろうという考えだったのだ。


 また三十騎にも満たない隊が敵であるはずがないであろうと、

 増援を送る為にあろうことか各門が開けていたのだ。


 キュバインは後先考えずに行動した。


 それによって今まで失敗を数多経験したが、

 時折このように思いがけぬ成功を納める。。

 
 かくして、力の足りぬ華國東部関所後方は安易に突破され、

 そしてキュバインは歴史の中心へとひた走ったのであった。

 
 キュバインは信頼していたのだ。

 
 ボーワイルドが必ず当たり前の様に王都まで辿り着く事を信じていた。


 一度としてその信用は裏切られた事は無かった。


 故にキュバインは命を掛けてでも同じく信用に答え、
 
 武将としての責任を全うしようとしたのだった。


 武運と武力、そして頑ななまでの信頼はキュバインに味方し、

 激戦地の突破を可能にさせたのであった。
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