『華國ノ史』
 あと少し、あと少しで敵の王を殺せる。


 払った犠牲と労力に等しい成果をあげられる。


 たかだか同数以下の軍の出現で諦められる物では無かった。


 ましてや、一騎当千の武将キュバインにとっては……。


キュバイン
「正気ですか?

 何故です!何故だ!」


ボーワイルド
「我々が全滅する。

 それだけは回避せねばならん。

 
 これからは防衛戦に転向するかもしれんのだ。

 
 少しでも戦力を温存させねばならん。

 
 全軍、新勢力を警戒、牽制しつつ撤退! 」


キュバイン
「何を言っているのか全く分からん!」


ボーワイルド
「落ち着け、キュバイン。

 奴等は強い、強すぎるのだ」

キュバイン
「彼等を知り恐れるのならば!

 私の怒りも知っておられるだろう、その実力も!

 私の方が強い!」


ボーワイルド
「待て!キュバイン!

 これは命令だ!」


キュバイン
「聞く耳持たん!失礼する」


ボーワイルド
「待ってくれ!

 これ以上を失う訳にはいかん。

 頼む!」

 キュバインは一時立ち止まったが、

 下を向き首を振って馬へと乗り込んだ。

 
 ボーワイルドは自分の非力さを呪い、

 悲しみと怒りに包まれた。
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