『華國ノ史』
 ピエロは素行に問題はあるがかなり優秀な調査員だった。

 
 嘘を見抜く事が出来る目は希で特殊な力だった。

 
 彼は出生時に母の命を代償として、自分の右目に嘘をついた者が醜く見える力を手に入れた。

 
 それは内部調査という仕事ではかなり役に立っていた。

 
 だが人の嘘を見抜ける力を持つと、特に彼の生まれた環境を考えると基本的に人間不信になっていく。

 
 どんな偽善者面をしても彼には醜く見えるからだ。

 
 その為に彼の感情は少しずつ削られていった。

 
 それも内調の仕事には合っていた。

 
 親しくなった者を検挙するのに役に立つ。

 
 これも目を手に入れた者の代償であろうか…ピエロは次第に心を閉ざしていったのだ。

 
 宿屋に帰ると主人が起きて待っていた。


主人
「血だらけですね?風呂をすぐに沸かし直します」

 
 宿のロビーのソファーにはセブンが眠っていた。


主人
「いやー帰って来るまで待ってるって聞かないもんで、


 ずっと待ってましたよ?

 
 何度も外に飛び出して貴方の姿を確認して、

 
 がっかりしたり、怒ったり、泣きそうになったり、


 そりゃ忙しそうにしてね。


 さっき疲れて寝ましたけど」

 
 ピエロがセブンに近づくと目を覚ました。


ピエロ
「待ってたのか?先に寝とけって言っただろう?」


セブン
「待ってないよ?寂しくもなかった」

 
 ピエロの右目にはセブンが歪んで見えた。
 
 
 それでもピエロには可愛く見えたのだった。


ピエロ
「嘘をつくと妖精に耳を引っ張られるぞ?」



セブン
「加護受けてるから大丈夫」

ピエロ
「ああ、そうだったな」

 
 ピエロはセブンがどんどん好きになっていった。

 
 両親の気持ちが今更ながらだんだん分かってきようだった。
 
 
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