『華國ノ史』
 キュバインは何時もと同じ様に相手を観察する。

 
 その歳は戦場に立つに値しない、筋力は、俺の方が遥かに上だ。

 
 背丈は俺が有利、経験は奴の方が上だ、それに奴は魔法を使う。

 
 武器は、あの武器じゃ俺の鎧は通せない。

 
 瞬時に幾つもの比較を重ね、そして何時もの答えに至る。


 俺が勝つ。


 キュバインは自慢の双斧を構えた。

 
 それに応じて一気にウルブスは気を爆発させる。

 
 消えるウルブス、キュバインは頬を斬られた。

 
 続いて額、鎧の無い剥き出しの体を攻められる。

 
 幾つもの魔法を同時発動させるウルブスの得意魔法剣技。

 
 駿撃の勇将と言われる由縁の技であった積層の剣舞。

 
 しかしその切れはいつもに増して冴えていた。

 
 そしてキュバインが過去にも聞いた台詞。


ウルブス
「傷は血を流す」

 
 キュバインの耳が裂ける。


ウルブス
「血は痛みを呼ぶ」

 
 キュバインの鼻が割れた。


ウルブス
「痛みで恐怖を感じ」

 
 キュバインは右目を失っても動じる事は無かった。


ウルブス
「恐怖は…死を招く」

 
 首に向けられたウルブスの剣はキュバインの斧に阻まれた。


キュバイン
「恐怖は忘れた」

 
 キュバインはウルブスの剣を先の攻撃で見破った。

 
 瞬間、降り下ろされた斧がウルブスを襲う。

 
 咄嗟に回避したウルブスの細い左腕はキュバインの足元に落ちていた。

 
 キュバインは不敵に笑い、それを踏み砕いた。

 
 鮮血が吹き出し、ウルブスの額には油汗が流れる。



キュバイン
「どうだ?痛みに恐怖を感じるか?

 死を招くぞ?」


ウルブス
「三度目は言わないと言ったはずだ。

 黙らせる為に、その首貰おう」

 

 
 

 

 
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