『華國ノ史』
リンスが目を覚ました頃には既に砦は陥落寸前であった。
魔力の尽きた魔法使い達も必死で戦ったが、数が違い過ぎたのだ。
騎士達は皆、誰一人も降伏する事を拒み、見晴らしの高塔へと籠った。
砦の壁には幾つも梯子がかけられ、侵入した兵により正門は開け放たれていた。
残るは高くそびえる塔のみとなっていた。
多くの者が螺旋階段を登ってくる煌皇軍にすがり付き、行く手を阻もうとする。
リンスは屋上に上がり、そこから遠くを見渡した。
華國はここからでは見えない事は分かっていたが、
彼はそちらへと目を向けていた。
華國兵
「下も時期に突破されます」
リンス
「すまんな、無能な男の為に」
華國兵
「そんな風に思う者は華國に一人もおりません。
あなたと共に死ねるのは名誉であります」
リンスは良い兵に恵まれ幸せだと思った。
ここまで懸命に戦い抜いた価値は十分に感じた。
それだけ敵に損害を与える事は出来た。
こちらの国には未だ多くの戦士が控えている。
後は託すのみ。
ふと目をやると華國の軍がこの砦に向かっている。
遠目でも分かる。
銀色の旗。
華國兵
「弟君ですな、しかしここはもう…」
リンス
「トリート…、命令違反をしおって。
王都を救い、この戦いに終止符を打ってくれる者は他にいまい。
だが、兄思いのお前の為に、せめて最後まで勇ましくあろう」
渓谷にはワイバーンの叫び声が木霊していた……。
魔力の尽きた魔法使い達も必死で戦ったが、数が違い過ぎたのだ。
騎士達は皆、誰一人も降伏する事を拒み、見晴らしの高塔へと籠った。
砦の壁には幾つも梯子がかけられ、侵入した兵により正門は開け放たれていた。
残るは高くそびえる塔のみとなっていた。
多くの者が螺旋階段を登ってくる煌皇軍にすがり付き、行く手を阻もうとする。
リンスは屋上に上がり、そこから遠くを見渡した。
華國はここからでは見えない事は分かっていたが、
彼はそちらへと目を向けていた。
華國兵
「下も時期に突破されます」
リンス
「すまんな、無能な男の為に」
華國兵
「そんな風に思う者は華國に一人もおりません。
あなたと共に死ねるのは名誉であります」
リンスは良い兵に恵まれ幸せだと思った。
ここまで懸命に戦い抜いた価値は十分に感じた。
それだけ敵に損害を与える事は出来た。
こちらの国には未だ多くの戦士が控えている。
後は託すのみ。
ふと目をやると華國の軍がこの砦に向かっている。
遠目でも分かる。
銀色の旗。
華國兵
「弟君ですな、しかしここはもう…」
リンス
「トリート…、命令違反をしおって。
王都を救い、この戦いに終止符を打ってくれる者は他にいまい。
だが、兄思いのお前の為に、せめて最後まで勇ましくあろう」
渓谷にはワイバーンの叫び声が木霊していた……。