『華國ノ史』
最早避ける力の無いリンスを次々と矢が襲ったが、
リンスの着込む黒獅子の鎧がそれを致命傷とする事を許さなかった。
鎧の継ぎ目を狙うワイバーンの騎手達。
意識は朦朧とし、目は霞んでいた。
肺が貫かれたのだろう、血の泡が口から吹き出て、咳がでる。
足の傷は燃える様に熱かった。
周りの味方が必死で自分を守る声が聞こえる。
そこへ階下から駆け上がってきたのは華國魔法隊三強の一つ、
王華隊の隊長であった。
名はボール、リンスと共に重き扉の城を攻略した男でカトリの父である。
ボールはワイバーンの声を聞きつけ、持ち場を離れ駆けつけたのだった。
ボールが旧友のリンスを見た時にはゼレイドが放った矢が彼の喉を貫いていた。
怒りに我を忘れたボールはワイバーンの群れが飛び交う屋上に勇ましく踊り出て次々に指示を出した。
「入り口を死体で防げ、もう死ぬ者もそこへ行け、
王子の首をとらせるな!」
ボールはリンスに駆け寄ると、リンスは二対の旗を手に持ち、必死で立っていた。
彼はボールを見ると少し笑った。
もう声も出せなかった。
「そうか、分かった。
お前は偉大な王ではなく英霊として民に愛されるだろう。
友よ、最後は誰にも邪魔はさせん!」
ボールは禁断の魔法を詠唱する。
一部の魔法使いだけに伝わる魔法、対価の法。
血を魔力に変え、尽きていた魔力を回復させる。
直ぐ様覚悟を決めたボールは叫んだ。
「さらば、勇ましい戦友よ!
…カトリ、お前も気高く生きてくれ」
ボールが崩れながらも唱えた魔法は上空から地面に向かい幾つもの竜巻を生んだ。
塔の周りを飛んでいたワイバーン達はその風を受け回転しながら地面へと落とされていく。
ゼレイドはこれを寸前で回避し、迫る華國救出軍を見て撤退命令を下した。
リンスは白くなる視界ごしにそれを見届けると階段へと体を向ける。
(さらば我が生涯の友よ。
さらば華國。
さあ、私の最後の仕事だ)
リンスの着込む黒獅子の鎧がそれを致命傷とする事を許さなかった。
鎧の継ぎ目を狙うワイバーンの騎手達。
意識は朦朧とし、目は霞んでいた。
肺が貫かれたのだろう、血の泡が口から吹き出て、咳がでる。
足の傷は燃える様に熱かった。
周りの味方が必死で自分を守る声が聞こえる。
そこへ階下から駆け上がってきたのは華國魔法隊三強の一つ、
王華隊の隊長であった。
名はボール、リンスと共に重き扉の城を攻略した男でカトリの父である。
ボールはワイバーンの声を聞きつけ、持ち場を離れ駆けつけたのだった。
ボールが旧友のリンスを見た時にはゼレイドが放った矢が彼の喉を貫いていた。
怒りに我を忘れたボールはワイバーンの群れが飛び交う屋上に勇ましく踊り出て次々に指示を出した。
「入り口を死体で防げ、もう死ぬ者もそこへ行け、
王子の首をとらせるな!」
ボールはリンスに駆け寄ると、リンスは二対の旗を手に持ち、必死で立っていた。
彼はボールを見ると少し笑った。
もう声も出せなかった。
「そうか、分かった。
お前は偉大な王ではなく英霊として民に愛されるだろう。
友よ、最後は誰にも邪魔はさせん!」
ボールは禁断の魔法を詠唱する。
一部の魔法使いだけに伝わる魔法、対価の法。
血を魔力に変え、尽きていた魔力を回復させる。
直ぐ様覚悟を決めたボールは叫んだ。
「さらば、勇ましい戦友よ!
…カトリ、お前も気高く生きてくれ」
ボールが崩れながらも唱えた魔法は上空から地面に向かい幾つもの竜巻を生んだ。
塔の周りを飛んでいたワイバーン達はその風を受け回転しながら地面へと落とされていく。
ゼレイドはこれを寸前で回避し、迫る華國救出軍を見て撤退命令を下した。
リンスは白くなる視界ごしにそれを見届けると階段へと体を向ける。
(さらば我が生涯の友よ。
さらば華國。
さあ、私の最後の仕事だ)