『華國ノ史』

雨に包まれる都

 華國王都は雨に濡れていた。

 それは火災が生み出した雨であったが、

 そこにいた人々には妖精が流した悲しみの雨に感じた。

 
 王都防衛戦後、西より進軍してきた煌皇軍は撤退を開始する。


 ただこれは容易なものではなかった。

 
 ウルブスを失った事を忘れる様にセブンは猛追撃戦を繰り広げた。

 
 今や華國一の魔法使いで編成された部隊は連戦の疲れ等忘れ、弔い戦に明け暮れた。

 
 ボーワイルドは逆に追われる身となり、

 各所で罠に掛けたがどれも強力な魔法で覆される。

 
 煌皇軍は次第に恐怖で支配されていく。

 
 全軍が西の渓谷に渡り着いた頃、戦力は逃亡兵等を含め六分の一にまで減っていた。


 そして彼等は目にする。

 
 後少しで全員が山頂の谷を渡ろうとした時、後続部隊が燃えるゴンドラと共に谷底へと落ちて行くのを。


 三日月城塞に再度、華國の旗が立てられ、炎の影に揺れる執念の魔法使い達の姿を。

 
 それは必ず来るであろう復讐者の恐ろしいまでの怒りの姿であった。

 
  
 

 
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