『華國ノ史』
 リンスの強い意志を受けたトリートは即座に動き出す。


 渓谷に横たわる死体を埋葬し、鎧や装備を回収すると、

 華國側まで軍を後退させた。


 王都強襲の報告が入ったのだ。


 一番幅が狭い関所門強化の指示を出すと、

 少数の兵を連れキュバインを追う様に王都へ向かった。


 王都オールインへ着いたトリートは顔を青くする。


 見るも無惨な光景が広がっていたのだ。

 
 唯一の救いはそんな焼け落ちた都の瓦礫を必死で運び出す人々であった。

 
 誰もがまだ街を捨てず再建を諦めていない目をしている。

 
 心を強く持ち直したトリートは忙しく働き回る民の挨拶を受け城へと向かった。


 城は無傷であったが、城を守る為に民はどれ程の犠牲を払ったのであろうかと思うと心をが苦しかった。


 トリートは激しい自責の念に囚われる。

 
 兄も救えず、王都も救えなかった。

 
 あの時、即座にどちらかに向かっていたならばと。

 
 彼は後悔しきれずにいた。
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