『華國ノ史』
 トリートは西で自分達以上の戦いを繰り広げた者がいると聞きリンスの葬儀を待たず直ぐに城を出た。


 (兄ならば分かってくれるだろう)

 そう思うとむしろ足が早くなる。

 
 王都に来た頃よりも激しい雨がトリートの肩を叩く。


「俺のこの熱を下げようとしているのか?

 それとも励ましてくれているのか?」


「トリート様」

 
 不意に声を掛けられたトリートが振り替えると、

 王都を最後まで守り抜いた魔法使いクラッシュがいた。


「王より、貴方の指示を仰げとのご命令を受けました」

 
 ブレイブリーはもう、失意を一気に激情に変えた若き王に国の未来を託すつもりであった。


 それを理解したトリートは少し考え、クラッシュを見る。

 
 同じ様に雨に打たれるやつれた男の目からは、

 絶対的に言われた事を遂行するという意志が現れている。


「国中に全てを知らせろ!

 魔法都市の陥落に続く戦況を全てだ。

 
 そして伝えろ、私の怒りの強さを、意志の固さを。

 付いて来る者には報酬を出す。

 
 活躍した者にはどんな者であれ身分と領地を与えると!

 
 膨大な富も、消えること無い名誉も、今ならば掴み取れるのだとな!」


「直ぐにでも大陸中から兵士が集まるでしょう。

 それでは急ぎますのでこれにて」

 
 クラッシュはそのままの足早に街へと消えた。

 
 トリートはそれを見届けると、自身も街へと向かった。

 
 多くの人が共に戦いたいとトリートに駆けつける。

 
 トリートは必ず戦いは終わらせないと約束し、

 一路セブン達のいる水晶山へと向かった。

 

 

 
< 240 / 285 >

この作品をシェア

pagetop