『華國ノ史』
 トリートが戦力拡大に奔走し、1ヶ月とちょっと過ぎた頃、

 田舎の小さな村で少し変わった話しを耳にした。

 
 その村から南に傷を癒すのに適した湯が沸いている街があった。

 
 その方角が夜になると凄まじく明るく光るのだという。

 
 傷だらけのトリートは治療とその謎を解明する為にその街を目指した。

 
 目指す途中、確かに街の方角から光が夜空へと舞った。

 
 無数の光は天を駆け、そのまま星になっていく様に思えた。

 
 これ程の光はおおよそ人が作り出せる物では無いだろうと皆は思った。

 
 しかし、トリートは確信する。

 
 あそこには彼がいると。

 
 王が認めた自分と同じ立場にいる者が。

 
 そう思うとトリートはいてもたってもいられなくなった。

 
 あの光が自分を導いている気がしてしょうがなかった。

 
 胸は苦しくなり、汗が出る。

 しかし傷の痛みは和らいでいた。

 
 不思議な光にトリートは何故か心踊っていた。

 
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