『華國ノ史』
 街に着くと直ぐに光の正体が想像していた人物で正解だと分かった。

 
 街の人の話しによると彼等は、ボロボロの状態で街にやって来たという。

 
 それまでに相当な訓練をしたのだろう。

 
 彼等は街にやって来てからも修行を続けた。

 
 朝から剣を振り回し、常人では考えられない動きをするという。

 
 1人の男が無数のナイフを飛ばし、もう1人の男を襲う。

 
 それを男は両手でやっと程度の木の剣を両手に持ち打ち落とす。

 
 さらにはわざわざ切れ味の悪い斧で大木を切り続け、

 今では街の周囲に木が無くなった程であった等、

 異常なまでに過酷な訓練を続けているそうだ。

 
 そして夜になると倒れるまで無数の魔法の矢を手に向かい打ち出し、

 足を引きずって湯で体を癒すのだそうだ。

 
 今は川の近くいるとの事を聞き、トリートは急ぎ向かった。

 
 川に近づくにつれ水の音に混じり、激しい金属音がする。

 
 音の方向へ向かうとそこに男がいた。

 
 一心不乱に巨大であっただろう岩を剣で削っている。

 
 その辺りは削られた岩が小石となり散乱し、

 その小石の数を見れば彼がどれ強い男か分かった。

 
 その汗が流れる傷だらけ上半身を見れば彼がどれだけの苦痛を味わって来たのかが分かる。


 歯を食いしばり、手から血を流すのも気にせず、

 自分自身を削っているかの様な姿にトリートは涙を流した。

 
 すると背後から不意に声をかけられた。

 
 全く気配がしなかったのでトリート達は咄嗟に構えた。

 
 そこには道化が一人お辞儀をして立っていた。
 
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