『華國ノ史』
 さっと構える近衛兵をトリートはいさめると共にセブンの元へと向かった。


 息をあらげたその屈強な戦士をトリートは王族特有の「人を見る眼」で見つめる。


 またセブンもこの王子を見た。

 
 片目は包帯で覆われ、髪はボサボサで顔は荒れていた。

 
 馬を引いている手綱にも豆が破れたのであろうか血が滴っている。

 
 銀色の毛皮は薄汚れ、髭は伸び放題であった。


トリート
「お互い酷い格好だな」

セブン
「リンス王子?」

ピエロ
「こりゃ凄い、セブンにはこの汚い人が誰だか分かったみたいだ」


近衛兵
「貴様!」

トリート
「はっは、いいんだ。

 俺はある一族からしつこい髭というあだ名を付けられた位だからな。

 
 セブン。いやセブン卿。

 初にお目にかかる。

 私は煌皇国と戦わなければならぬ者だ。

 
 一目救国の勇士を見ておきたかったのだ」


ピエロ
「この人はリンス王子の弟だよ」


セブン
「道理で雰囲気が似てたわけですね」

 
 そういうとセブンは膝をつき、頭を下げた。


トリート
「私は兄も国も民も救えなかった。

 今までは、これからは違う。

 君もそうなんだろう?」


セブン
「これからは…そうですね!

 もうこれ以上は、必ず!」

トリート
「兄は君の事も話していたよ。私と気が合うだろうってね。


 お互い自信が無い者同士だとも言っていたな。

 
 だからどうだろうお互いに助け合うというのは?」


セブン
「必ずお助けします!騎士の誇りに掛けて!」

トリート
「ならば私は王子としての威厳に掛けよう」
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