『華國ノ史』
 既に集まった軍に更なる大軍が援軍として駆けつけた。


 先頭を行くにはトリートの命を受けていたクラッシュと賢者ケイロン、

 そして水晶山の大魔女であった。

 
 各領主も自ら出向き、名のある私兵団を率いた。

 
 多くの民兵と各拠点の防衛兵もが三人に続いた。
 
 
 今では華國三賢と呼ばれるこの三人も皆との再開を喜び、

 トリートはクラッシュの功績を労った。

 
 だが、まだこれでは終わらなかった。

 
 トリートが盟約を結んだ海賊カッツは隣国、浮雲島等から兵を募り見事艦隊を作り上げ、

 王子の前に膝をついた。

 
 華國正規軍の騎士団、防衛兵。

 各領主の私兵、あらゆる一族の戦士。

 民兵、海賊、盗賊。

 名を馳せた英雄が一同に介した。

 
 防衛には一切余力を割かなかったこの大軍勢は、

 兵力均衡、経済、食料環境等、国が倒れる程の規模であった。

 
 しかし、商人、農民等、戦闘に参加出来ぬ者達のあらゆる支援がそれらを上回る。


 自主的な国民一体の軍は史上最も巨大であり、強力なものであった。

 
 これにより前代未聞の国倒しの大軍は成った。


 彼等を集められたのは、戦死を遂げたリンス、ウルブスの魂の叫び。

 
 王都を守れなかった者達の償い。

 
 先の戦いで兵力を上回ったという結論からの打算。


 若き英雄への憧れ、そして狼の執念であった。

 
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