『華國ノ史』
 逆人はこの牢に入れられた男が何を言っているのか理解が遅れた。


「これを見ろ」

 
 それを察したピエロは上着を脱ぐとその体に入れた無数の刺青を見せた。


「俺はこういう呪いも研究しててな。

 
 魔法都市でお前達の同胞の遺体を調べさせて貰った。

 その後は丁重に埋葬させて貰った」


「お前、まさか、この呪いを解けるのか?」


「答えは、『その為に来た』だ。

 まあ、非人道的な研究をちょいと繰り返したがな。

 
 一部の者しか知らんよ、お前達が無理矢理戦わされているという事を知っているのはな。

 
 お前、名は?」


「…42番だ」


「…ったく酷い野郎どもだな。

 そうだな、お前はファーストだ。

 俺の初めての逆人の仲間。

 
 どうだ?今の状況から命を掛けてでも抜け出したいか?

 
 誇りと尊厳を勝ち取りたいか?

 例え死ぬ事になってもだ」


「良い名だ。夢でも見ている様だ。

 それが事実なら何でもしよう。

 我々は仲間と一蓮托生だから歯向かえなかった。

 
 戦う力が無い者もいる。

 見捨てられなかったのだ。

 
 この災いさえ無くなれば、俺は喜んで死のう」


「夢を見てる様?

 俺は道化だぞ夢を見させるのが仕事だ。

 早速今から言う物を集めろ。

 刺青に使う簡単な物だ。

 後は芝居だ」


「こんなに大きく鼻が膨らんだのは初めてかも知れん」


「名前、鼻の穴にするか?」


「御免こうむる、先のが気に入ったんでな」


「助かったよファースト。俺の首も危なかった」


「ならば友だ」

 ファーストは手を出した。


「友…ああ、間違いない。お前も友だ」

 ピエロはしっかりと両手で逞しい戦士の手を取った。


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