『華國ノ史』
 逆人ファーストは息を切らせ牢獄の門を叩いた。


「終わったか?」

 
 看守はニヤニヤと笑いながら入って来た。


「なんだー?全然まいってないじゃないか?」


「当たり前だろう?

 俺は無限の魔力があるんだぞ?」


「奴の魔法瓶は強力だ、俺一人じゃ殴っても一向にこたえん」


「ちっ、ムカつく野郎だ」


「どうだろう、いっそ我々逆人の居住地に縛りつけ、

 交代で魔法を封じるというのは」

 ピエロの顔から笑みが消えた。

 それを見ると看守は一層汚い笑いを浮かべた。


「あの隔離地域は牢獄より悲惨だな、

 鬱憤の溜まった野人どもの巣窟だ。

 早速執政官どのに相談してきてやろう。

 どうだ?笑えよ道化?」


「殺すぞ?」


「ヒヒヒヒ、怖いね。おい、お前。

 しっかり見張っとけ、後でたっぷりこいつを殴れるぞ!

 俺にはちょっとしたコネがあるんだ」


「今から楽しみです看守どの」


  看守は勝ち誇った様に出て行った。

「楽しみだなファースト?」

「ああ、あいつの頭が悪くて良かった」


「演技が上手かったのさ、後でもう一芝居うってもらうぞ」


「わくわくしてきた。こんな気分は初めてだ」
 
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