『華國ノ史』
 逆人の住まう隔離地域は高い壁に囲まれ、

 四六時中魔法使い達が壁の上から監視の目を受けていた。

 
 鎖です巻きにされたピエロはその鎖をも操り必死の抵抗劇を見せていた。


 移送官達は囚人ではあるが、多くの情報を持つこの男に手を焼いていた。


ファースト
「我々の家に入ればその元気も無くなるだろう。

 散々手こずらせ、罵倒を繰り返した報い。

 人目の付かぬ場所ならば何をされてもわかるまい」


 逆人であるファーストは笑いながら言うと移送官達は喜んだ。


 こまづかいの移送官達には亡命者が苦しむのが愉快であった。

 
 自分達の仕事を増やす者には特に。

 
 しかも自らの手を汚さずに済むという逆人の脅し文句は是が非でも無かった。


ファースト
「我等を監視する魔法使い達が邪魔せねば良いが」

移送官
「伝えておこう、歓迎会は邪魔をするなとな。

 やり過ぎて殺すなよ?

 事故ならしょうがないがな?」


ファースト
「こいつは魔力が多い、入れ替わり立ち代わりで歓迎させていただこう」


移送官
「まあ、憂さ晴らしに道化はぴったりだろうな。

 精々楽しめ」

 
 移送官達がピエロを居住区のテントに運び終え、

 出て行くと直ぐに幕が下ろされピエロのうめき声が漏れた。


移送官
「相手が悪かったな?ああはなりたくないもんだ」

移送官
「ああ、あいつらの日頃鬱憤は相当なもんだろうからな」

 だが、実際はピエロは声を出すだけで直ぐに解放されていたのだった。
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