『華國ノ史』
 その夜、壁の上の煌皇軍の魔法使い達は次々と息を引き取った。


 その首にはピエロを縛っていた鎖の跡が巻き付く様に残っていた。


 ナイフワルツの応用したピエロの暗殺は見事に監視の目を閉じさせ、

 その鎖と、逆人達のテントで作られたロープで見事壁からの脱出に成功した。


 しかし、煌皇国首都は広く、城壁は高く、目立つ逆人が門を通り抜けるのは難しかった。


 そこで目を付けたのが、煌皇国の秘密兵器とも言える秘宝「銀竜」であった。


 ドラゴンと精霊の中間の存在であった特殊な銀竜を捕らえ、

 魔法によって洗脳し、人員が搭載可能なように改造された移動船である。


 これは皇帝の脱出目的で常に帝都に配されていた。

 警備もされていたが、全くの予期せぬ反乱とピエロの暗殺の手腕もあり、

 逆人達は武器を手に入れ本格的に奪取へとのり出した。

 
 異変を察知した頃にはピエロ率いる反逆の逆人は銀竜に乗船し、

 魔力供給を行っていた。


ピエロ
「おいまだか?気付かれたぞ!」

逆人
「あなたと違って、我々は魔力遮断魔法しか教えられていないんだ。

 難しいんですよ」


ピエロ
「でかいなりした百人の猛者が泣き言うな。

 俺の魔力は残り少ない、何とか踏ん張れ!」

 
 ファーストは迫り来る煌皇兵を見てピエロを抱き締めた。


ピエロ
「おい!こんな時にやめろ!お前は俺の趣味じゃない!」

ファースト
「世話になった」

 ピエロは何も言わずファーストを見た。

ピエロ
「お前の次は俺が行く」

ファースト
「ならば我が命が尽きようが、尽く事はない」

 武器を手にファーストは果敢にも銀竜から踊り出た。

 
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