『華國ノ史』
 二月会戦の傷痕残る東の渓谷をセブン率いる第三団が進軍していた。

 
 目の前には悲劇の舞台であった高塔砦が見える。

 
 セブンは右手を上げ軍を静止させた。

 
 見慣れぬ一団がその砦前に布陣していたからである。

 
 黒づくめの装備を整えていた彼等は遠目からでもその体格の良さが見てとれた。

 
 猛者揃いの第三団の誰もが彼等を強く警戒し、

 戦いの覚悟を決めていた。

 
 しかし、一人こちらへと歩いて来る仮面の男を見ると、

 セブンは直ぐに走り出した。

 
 後を追うように部隊長達も後へと続いた。

セブン
「ピエロでしょ?」

「当たり」

 仮面を外した男はセブンの幼い頃からの友であった。

 普段の装いと変わり、黒いコートに、黒い仮面、

 弓を腰に下げ背中には湾曲した剣を背負っていた。


セブン
「歩き方で分かったよ、でもその格好は?それに彼等…」

ピエロ
「本格的に戦うんだから装備を一新してね、内調じゃなないし。

 
 それなりに戦闘用にしたんだ。

 彼等はサーカス族。

 煌皇では逆人と呼ばれてた」

ジェノス
「逆人?あいつらを引き込んだのか?

 でもあいつらは俺の調べじゃ帝都で管理下に置いてるはず。

 それに束縛の魔法も」

ピエロ
「ああ、ジェノスは外部調査員だったね。

 
 解放するのに苦労したんだから、一緒に戦ってくれるそうだ。

 
 紹介するよセブン。

 それにリンスの眠った場所にもいかなくちゃ」

ジェノス
「冗談だろ?すげーなおい!」

セブン
「やっぱりピエロはいつもとっておきを持ってるんだね」

 
 ピエロはとても満足そうにセブンの肩をとって砦へ招いたのだった。


 
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