『華國ノ史』
 第三団は高塔を登り屋上へと出ると、

 ワイバーンとの戦いの傷痕と流れた血が辺りに染み込んでいた

 
 中央にはかつて華國を愛した王子リンスの旗が立てられている。

 
 フィナレ教会騎士団長のサジは死者を弔う祈りを捧げ、

 皆もこれに習った。


サジ
「女神フィナレ様は言われた。

 たかだか『死』のようなものごときでは魂までは滅ぼせないと。


 強大な目的の前に臆病をする者は、

 その目的の大きさを知らぬ者であると」


 皆はその旗に向かい膝を付き、この戦いに終止符を打つ事を宣誓した。


 セブンは立ち上がり、土魔法で見事なリンスの像を作り出した。

 
 それは猛々しくもあり華々しく、素晴らしい出来に皆は驚いた。

 
 それは華國とは逆を向き、煌皇国を見据えている。

 
 華國一の騎士に背を見られているという心強さと、

 無様な戦いは見せられぬという声が上がり、

 第三団の士気は大いに盛り上がった。

 
 華國三強と精鋭の騎士団、そして金獅子王子が命を散らしたこの地で、

 確実に意思は継がれた。

 
 新たな精鋭達は彼等に黙祷を捧げ、その魂を送った。

 
 これよりセブン率いる新たな華國精鋭軍は南の大陸での戦いへと向かうのであった。


  
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