『華國ノ史』
 戦列をどんどん押し込む第三団であったが、ここにきて思わぬ足止めを食らう。


 一定距離毎に投降者が来るのである。

 
 戦列に加える訳にもいかず、本国へ移送する暇も無く、見捨てる訳にもいかなかった。


 セブンはここで即座に使いを出し、捕虜とした者を足の早い者を使い近くの村へと送った。


 何も持たず、飢えた投降者に食料と水を削られ、補給にも時間を割かれた。


 ボーワイルドの焦土の計であった。


 力で止められぬ精鋭に対し、無力な病人、怪我をした将兵等死に兵を当てる。


 戦力は減るものの正面から力で当たるよりも余程効果があったのだ。


 加えて近隣の村へはこの華國第三団に協力しないように呼び掛けていた。


 当初の勢いを消されたセブン一行は遅延作戦に苦しめられ、焦りを感じていた。

 
 だが、この作戦に当初から感づいていたセブンは本国に第四団を要請していたのであった。。


 それは華國本国より列をなし第三団の後を追いやって来た。


「華國総合商業連合団」

 
 戦争に加勢する、一部ピエロに脅された商人の集団であった。


 敵戦力の無い南を商い上、蹂躙する為にやって来た商売人は、

 連合そっちのけで、どこにも負けられぬと凄まじいスピードで補給をセブン達一行に行った。


 第三団に一度の補給を行えば、南での商業権が与えられる。


 二度行えば補給量に応じて税金の減額。


 三度行えば南から北への商品の輸送の関税免除。


 その商売根性逞しく、非協力的な南の町を懐柔し、

 第三団に補給を行うと捕虜を引き取り半ば強引に商団に組み込んだ。

 
 軍税で苦しむ南から貴金属、宝石、美術品や歴史価値のあるものを目ざとく見つけては腹の足しになるものと華國貨幣で交換し、

 せっせと南から北へと商品を運んだ。


 利害が一致した第四団の活躍により第三団の足は再度軽くなったのである。

 
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