『華國ノ史』
 悪魔の召喚は大陸全土で固く禁じられた協定であった。

 
 召喚方法も非人道的であり、召喚された悪魔は時として思いもよらぬ厄災を生むからである。


 その召喚方法は、生け贄。

 
 罪人を痛め付け、精神的に追い込み、死ぬ間際に望む物を与えた。

 
 死の淵にたった罪人は目の前に出された者を掴もうとする。

 
 そこで更に止めに近い苦痛を与える。


 ほとんどの罪人は恨み、怨み、欲張り、呪い、執着する。

 
 魔方陣の中で負の感情は高まり、罪人を媒介として悪魔が呼び出される。


 呼び出された悪魔がどんな能力を持つかは定かでは無く、思考も性格もわからない。

 
 それ故に危険であった。

 
 過去にこれで呼び出されたのが、

 かつての大魔法使いであり、

 死神に魂を売り悪鬼と化したベルベットである。

 
 死神のランタンを渡す代わりに場内の者の命を全て奪うという惨劇を起こした。


 しかし、この月の都の惨殺事件に呼び出された悪魔の数は12体である。


 毒を盛られた月の隠れ里の民と、

 それを呼び出した魔法使いは命を奪われ、隠れ里は抵抗虚しく壊滅する。


 あまりの惨状に煌皇軍は崖を崩しここを封印した。


 幸いそこから悪魔が湧き出る事はなかったが、時より訪れる旅人は謎の失踪を遂げる。


 また悪魔の声を聞いたという者もいる隔離された土地となったのである。

 
 

 
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