『華國ノ史』
 セブンは水の堀を慎重に渡り、祭壇へと進んだ。


 祭壇の奥には石の棺があり、美しい女性が彫られていた。


 キルキスの祖母である。


 キルキスの母は幼き頃に里から出されていた。

 
 何人かの月の民の女性は皇帝に秘密で外に出されていた。

 
 その能力ゆえ危険視されていた事を知っていた為に、

 彼等は定期的に水晶山へと隠れる様になった。


 その力は男性よりも女の方が遺伝しやすかった為に主に首長の女性と、召し使いの男が選ばれたのだ。


 ここに眠るキルキスの祖母は悪魔の襲撃に際し、この祠で眠りについた。


 棺の両手の部分に臼青い炎が揺らめく宝玉が添えられている。


セブン
「これが…」


 だがそれは只の入れ物に過ぎなかった。

 炎は玉を割り、セブンの手を包む、仲間焦り直ぐに火を消そうと駆け寄った。

 
 しかし、炎は既にセブンを包み、そして、語りかけた。


セブン
「皆!大丈夫、心配ない、…これは。


 そうか、これが月の魔法」

 
 青い炎は収まり、セブンの手の平には小さな月が生まれていた。


セブン
「月の民じゃないって驚かれたけど、認めてくれたみたい」


 そう、宝玉には月の民の魂と魔力、そして魔法が封じ込められていたのだ。
 




 
< 276 / 285 >

この作品をシェア

pagetop