『華國ノ史』
 セブンは開始の合図と同時に自分が壊わさなかったバリケードに身を潜めた。


 さっきまで優しかったウルブスが決闘を仕掛けて来たことが未だに信じられずにいた。


 しかしすぐに戦闘に集中する羽目になる。

 セブンの背中をウルブスの魔法球が襲う。

 それはセブンの攻撃の威力と同等かそれ以上であった。

 セブンは衝撃で転げ回り、振り向いたがそこにウルブスの姿は見えない。

 
 走ってバリケードに隠れようとしたが、そのバリケードも吹き飛び、右手を負傷した。


 悲鳴にも似た声を上げ、痛みを紛らわし立ち上がると、

 次は足元付近に着弾があり、砂煙が視界を奪う。

 
 セブンが走って砂煙を抜けた場所を狙いすましたかの様にいくつも小さな魔法球が連続してセブンを襲った。


 いくつもの被弾を受けたセブンは金切り声を上げ、パニックに陥り恐怖に涙を流した。

 
 それを見下ろすのはウルブスはいまだ厳しい表情であった。


ウルブス
「貴方の両親は野蛮では無いでしょう。

 ですが、貴方はそれを否定出来る力を持たなかった。

 力が真実の証明にはならない事が分かりましたか?

 
 強いという事は悪いことでは無いですが、

 強さを誇示する為にもっぱら暴力を振るうのは賢い人間のやる事ではない。

 
 ましてやそれは本当の意味での強さではありません」

 
 セブンは泣きながらウルブスに聞いた。


セブン
「どうすれば、賢く?

 どうやったら、強くなれるの?」

 ウルブスは手を差し出し、セブンはそれを掴んだ。


ウルブス
「それをこれから学んでいくんですよ、カトリ殿もね?」

カトリ
「はいっ!」
 
 カトリは獰猛なセブンを軽々と手玉に取ったウルブスに恐れを抱いた。

 
 ウルブスは何時もの笑顔に戻っていた。

 それを見たセブンは安心して泣きじゃくった。

 ウルブスが優しく抱き上げてやると一層に悲しさが込み上げ涙が止まらなかった。

クラッシュ
「衰えを知らんな、元英雄殿は、まさに適任だな、医療班!

 医療班?顔色悪いな?

 魔力遣いすぎたか?

 疲れてるな」

 入学式前に二度も医療班の世話になったセブンは医療班泣かせとしてブラックリストに載った。
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