『華國ノ史』
 全員で囲む丸いテーブルには次々に湯気を立てた料理が並べられ、

 食欲を掻き立てる匂いが広がっていた。

セブン
「美味しそー!」

クロネ
「これ全部ウルブスさんが?」

ウルブス
「いえ~?私はただ運ぶだけです」

 そこには笑うカピパラと違った更なる不思議が隠されていた。


ウルブス
「普通の寮には料理人や手伝い妖精のブラウニーがやってくれるんですが。

 
 この寮だけはゴーストが料理を作ってくれます」

カトリ
「ゴースト?」

ウルブス
「不可視の料理人と呼ばれていますがね」

セブン
「おかし?」

クロネ
「ふかし、つまり見れないって事よ」

カトリ
「幽霊が作ったものなんて食えないよ」


 カトリが悪態をつくと、カトリの目の前の料理が独りでに飛んで行った。

ウルブス
「しーっ!」
 
 ウルブスは人差し指を口にあてがった。

ウルブス
「機嫌を損ねると、怖いですよ?

 
 料理を沢山残せば次の日の料理はカエルとかが出てくるし、

 つまみ食いや盗み食いをしようとキッチンに入れば鍋を被されますからね?

 じゃあ頂きましょう!」
 
 ウルブスは待ちきれなさそうに、嬉しそうに言った。

セブン
「美味しい!」

ウルブス
「やはり!絶品だ!またこれが食べられるとは!」

クロネ
「じゃあ!ウルブスさんも?」

ウルブス
「ええ、ええ。

 正に、ここの寮で育ちました」
 
 並べられた料理には口々に称賛の声が上がった。

セブン
「美味しいよ?」

 カトリに自分の一番美味しかった料理をセブンは分けてやった。

ウルブス
「ふふふ、それでこそカピパラの寮生ですな」

 カトリはよだれを我慢できず、

 皆に習い両手で食事に貪りつくと思わず笑顔が溢れ出た。

カトリ
「なんだ、これは!

 うちのお抱え料理人より数倍美味しい!

 あいつは首だな!」
 気を良くした料理人からメッセージが皆に送られた。

「ようこそ!そしてお帰り!」

 と書かれた紙ナプキンが宙を舞い

 カトリの皿が戻り、お代わりがテーブルにドカっと置かれた。

ウルブス
「なんと!覚えていてくれたのですかっ!

 皆も歓迎されたようですな。

 歴代の中には料理人に嫌われ逃げ出した者もいるんです。

 ですが、これだけは言わせて頂きたい。

 共に助け合い、よく学び、よく食べる。

 辛い事があっても仲間と美味しい料理があれば頑張れるものです」


クロネ
「だから偉大な魔法使いが生まれるんだわ」

 皆は各々自己紹介をし、王族さえも裏やましがるという素晴らしく美味しい食事を楽しんだ。

 
 
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