『華國ノ史』

華の入学式

 笑うカピパラ寮では家具を乗せた馬車と人足の対応に追われていた

 かつての英雄を他所に、五人は街を楽しんでいた。

 
 ミニッツ&セコンドは赤と青の皮靴を買わされ、

 クロネは地味な制服を装飾する為に裁縫道具を一色揃えご満悦。


 あらかた目ぼしい家具を揃えたカトリは綺麗な厚紙で出来た箱をセブンに投げた。

 
 セブンはそれを受け取り、箱を開けると綺麗な絹の寝間着が折り畳まれていて、上品な香りがする。

セブン
「ツルツルしてるや」

カトリ
「それがパジャマだ。
 
 次からはそれを来て寝るんだぞ」

クロネ
「良かったねセブン」

ミニッツ&セコンド
「優しいじゃん」

カトリ
「買った家具を汚されたくないだけだ!

 次はひび割れランプ通りへ行くぞ」

クロネ
「賛成ー!」

 眠りドラゴン城敷地内には魔法使い達が集う商店通りがあった。


 石畳は大小の魔方陣が勝手に描かれ、森の妖精やコボルト達が森の恵みを売りにやって来る。


 怪しい看板達が宣伝文句を歌い、通りに並ぶ煙突達は緑や紫の煙をむせたように吐き出していた。


 それぞれの専門店が軒を連ねるそこはひび割れランプ通りと呼ばれていた。

 
 魔力がある者しか使えない物や、魔法の勉強をしている者にしか必要がない物を売っている為、

 一般人からして見ればガラクタであったからだ。

 
 それでも通りは不思議な雰囲気を一目見ようと押し寄せる観光客と、魔法使い、人じゃないものでごったがえしている。


カトリ
「ここは街の中でも一番危ないから気を付けろよ」

クロネ
「でも早速セブンが行方不明なんだけど」

ミニッツ&セコンド
「ホントだ」

 四人が右を見れば意地悪そうな牙を生やしたオークがたむろしている。

 
 左を見れば通りを行く人に噛みつこうとしている鳥籠に入ったグレムリン。

 
 叫び声に振り向くと実験に失敗して黒焦げになった魔法使が店から通りに飛び出していた。

カトリ
「ヤバい!
 
 ここは絶対にあいつにとってヤバい!

 また暴力沙汰を起こすぞ!」

クロネ
「探さなくっちゃ!」

ミニッツ&セコンド
「困ったね」



 
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