『華國ノ史』
 門が再び閉じられ、城壁の外では踊る炎とサラマンダーの王が戦っていた。


 踊る炎は逆人の魔力を遮断する力で次々に駆逐されていった。


 逆人に何かをされたいうのを感じた彼等は、怒った様に猛烈に暴れ回っていた。


 彼らは実体がないので物理攻撃が効かず、また盾や剣で受けてもそれをすり抜けて燃やした。


 サラマンダーの王と呼ばれた精霊も逆人の魔力の遮断魔法にかかるが一向に力は衰えを見せない。

 
 逆人は知らなかったのだ。

 
 精霊は魔力が配給されている訳ではない、契約内容はそれぞれなのだが基本的に体内に取り込んだ魔力が尽きるまで精霊力をもって戦うのだ。

 
 つまり逆人にとって精霊はかなりの天敵となった。

 
 いやこのサラマンダーならばあらゆる者の脅威となるであろう。

 
 通常の個体を遥かに上回っている王は身体中から火の粉を巻き上げ、近づく者を焦がし、あらゆる者を踏み潰して進んだ。

 
 水の魔法使いが駆けつけた頃には辺りは火炎地獄と化し、その張本人は魔力が尽きその姿を消していた。


ボーワイルド
「予想以上の被害を受けたな、

 アレを生み出した奴は必ず見つけ出し殺せ。

 次もあんなのが出てきたらかなわん。

 秘宝の準備をしておけ、

 この程度で終わりじゃ無いだろう?魔法都市」


 二度目の正面ゲートが破られた時には華國軍の魔法使い達は正面ゲートに防衛線を張り必死の抵抗を行った。


 多勢に無勢、精鋭に対して研究員や年長の訓練生では勝負にもならなかった。


 華國軍は撤退を繰り返し、中央通りに煌皇軍が溢れると、それを食い止めるべく二人の影が立った。


 通り過ぎる人々は皆一様に頭を下げ、勇敢な兵士はその場に立ち止まり共に戦う事を望んだ。


 燃やされる街を見て怒りに震える者が二人。


 一人は老体とは思えぬ上半身を晒し出したウルブス。

 
 そして分厚いグリモワールを手にした賢者ケイロンであった。

 
 




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