好き嫌い。
その3
振り向かずに立ち止まる。
「何?」
もうすぐ卒業する。
そしたらもう会わない。県外に出るし、地元に帰ることはないだろう。
だから、もう。
さよなら、なんだよ。こうちゃん。
「なんでそんな態度なんだよ。」
「別にあたしがどんな態度でも、奥井君には関係ないでしょ。」
「あるよ。なんかムカつく。」
近寄ってくる彼の体温を感じる。
実里より首一つ大きい康太。
あの日、掴まれた腕がジンジンする。
「好きだって言っただろ、あん時。」
「…もう随分前だもん。気持ちは変わるから。離して。」
ぎゅう、っと後ろから抱きしめられて声が震える。
「じゃあなんでこんなにドキドキしてんだよ。」
「…めっ、免疫ないから仕方ないじゃん!」
くくくっ、と笑う康太の声に胸がキュンとする。
「ちいさいな、ミノリ。こんな小さい手であんな凄いことすんだなぁ。」
…凄いこと?
あぁ、ピアノか。
「あんたのピアノ、聞くの好きだった。
イメージが湧いてきていい写真が撮れるから…」
ピアノが、なんだね。
ピアノが好きなんであって、あたしは付録。
「卒業したら、どうすんの?」
「奥井君には関係ないよ。」
そっけなく答えるので精一杯だ。
「何?」
もうすぐ卒業する。
そしたらもう会わない。県外に出るし、地元に帰ることはないだろう。
だから、もう。
さよなら、なんだよ。こうちゃん。
「なんでそんな態度なんだよ。」
「別にあたしがどんな態度でも、奥井君には関係ないでしょ。」
「あるよ。なんかムカつく。」
近寄ってくる彼の体温を感じる。
実里より首一つ大きい康太。
あの日、掴まれた腕がジンジンする。
「好きだって言っただろ、あん時。」
「…もう随分前だもん。気持ちは変わるから。離して。」
ぎゅう、っと後ろから抱きしめられて声が震える。
「じゃあなんでこんなにドキドキしてんだよ。」
「…めっ、免疫ないから仕方ないじゃん!」
くくくっ、と笑う康太の声に胸がキュンとする。
「ちいさいな、ミノリ。こんな小さい手であんな凄いことすんだなぁ。」
…凄いこと?
あぁ、ピアノか。
「あんたのピアノ、聞くの好きだった。
イメージが湧いてきていい写真が撮れるから…」
ピアノが、なんだね。
ピアノが好きなんであって、あたしは付録。
「卒業したら、どうすんの?」
「奥井君には関係ないよ。」
そっけなく答えるので精一杯だ。