好き嫌い。
「説明してもらおうじゃない!奥井 康太‼︎」


文字通り仁王立ちのアキ。
泣いて走り去った実里が心配ではあるけれど、走って追いかけることができなかったため。


とっ捕まえた康太に詰め寄っていた。


「実里見たでしょ⁉︎泣いてたのよ、幸せにするって約束をしたじゃない!」


一方的に怒りをぶつける。

「…」


大きな身体を縮こまらせて、康太はアキに叱られている。


「ちょっとぉ、アタシ修羅場とか嫌だからね、話が違うじゃん。」


康太と一緒にいた女の子が怠そうに話す。

「うるさい、ガキ。あんたは帰ってママのおっぱいでも飲んでなさい。乳臭いガキのくせに色目使ってんじゃないわよ。」



アキがそう言うと、反論もせず女の子は立ち去る。


「黙ってないで説明しろ、奥井康太。」



怒ったアキは誰よりも怖い。
実里のことになると、尚更怖さ倍増だ。


「…言い訳にしかならねぇから言わない。」

バチン‼︎



派手な音がして、康太の左頬が赤くなる。



「言い訳でいいから説明しな。さっきの実里見たでしょ?またあんたにひどい目に合わされて、あのこどうなるかわかんないわよ。
実里が大切じゃないの⁉︎
実里に何かあったらあんたのせいよ!」


それだけ言うと、携帯を取り出す。


「あ、香代?あんたの旦那に頼んで実里探してもらえない?
あぁ、理由は後で話す。とにかく急いで探して欲しいの。
うん、こっちに帰ってきてるから。

…よろしくね。」



短めの電話を終え、再び康太に向き合う。


「一時的な快楽のために傷付けて平気なら、あんたに実里はやらない。

あの子は真っ直ぐなの。

真っ直ぐで真っ白で…優しい子なの‼︎


間違いなく今自分を責めて泣いてる。

なんで手を離すのよ!

他の男に実里取られてもいいのね⁉︎」



そう言われた途端、康太は顔を上げた。


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