ウサギの配達屋
一年前、お母さんが自殺をした。
悲しみの真っただ中に、お父さんが次のお母さんを連れてきた。
はじめまして、と笑顔であいさつをするその人のことを、ぼくは知っている。
綺麗なひと。
お父さんの部屋でみつけた写真に写っていた、綺麗なひと。
最初のお母さんも、新しいお母さんも、ぼくは好き。
だけど、なんとなく、最初のお母さんを裏切ったような気がして、素直になれなかったんだ。
何品も並んだ料理はどれも美味しいのに、「美味しくない」って言ってしまったり、ぼくの好きなアニメのハンカチを探して買ってきてくれたのに、本当はとても嬉しくてはしゃぎまわりたいくらいだったのに――「好きじゃない」って言ってしまったり。
いつも、ごめんなさい、って謝りたかったんだ。