ウサギの配達屋

 あの場所で、確かに握っていたはずの手紙がないことに気づいたのは、ぼくが退院した後だった。

 こっそり病院を訪れて、ぼくが入院していた頃よく話しかけてくれていた看護婦さんに訊いてみたけれど、手紙の忘れ物はなかったという。もちろんポケットの中にも、帰ったあと自分の部屋をぐちゃぐちゃにしながら探したけど、結局見つからなかった。

 書いた覚えはないけれど、なんとなく内容はわかっている。

 だって、ブラウニーが言っていた。

 伝えられなかった言葉が、手紙として届くんだって。きっと、だからぼくもあの場所に行けたんだろう。夢だと思うには、あまりにもブラウニーの手は温かかった。

 ……また会いたいな。

 今度は夢の中で十分。

 もしかしたら、今夜あたり、見れるかもしれない。そのためには、夜更かしなんてしないで、早くベッドに入らなくちゃ。

 その前に、お母さんが作った夕食を食べなくちゃ。

 今日は、野菜コロッケとクリームスープ。

 もちろん、グリンピースは入っていない。
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