伝わらない、伝えられない
いきなりのちとせの登場に正直焦る気持ちはあった。
葵と同じように、咄嗟に追いかけようとしていたし…
でも今は葵の返事を聞くのが先だ。それを優先すべきなんだ。
「小さい頃から葵が好きだった。今までずっと…答えを、聞かせてくれるか?」
「冗談…じゃないんだよね?」
「さすがにそんな事はしないっつーの」
「そ、そっか…そうだよね…」
俺の想いが少しは伝わったのか、恥ずかしそうに俯く葵。
その顔はほのかに赤みを帯びている感じがする。
葵に告白するとは想像もしていなかった。
自分の気持ちに付き合っていずれは葵に恋人が出来て…それで俺も諦めがついて次の恋へ。
イメージとしてはそんな順序を歩む予定だったから。
思ってもみない自らの感情や周りの出来事に翻弄されて…俺は今ここにいる。
まぁ相手の答えが安易に思い付いてため息が出そうな位だ。
そうは言っても内心ばくばくだが。
ふと葵が声を出そうとして、空気を吸い込む音が聞こえた。