伝わらない、伝えられない


「粗茶ですが…」



「おっ、サンキュー」



先輩に送ってもらったあたしは、せめてものお礼にと飲み物を出す為に家に上がってもらった。


あたしと先輩の間に流れる沈黙…


それを破ったのは、先輩の方だった。



「あいつのどこが良いんだか」


「えっ?」



いきなりの言葉に訳が分からず先輩を見る。


すると、目の前には苦しそうに目を細めてあたしを見る拓真先輩の姿が…



「好きなんだろ?…有澤悠斗のことが」



そんな…


まさか、明だけでなく先輩にも知られていたの?


自分では隠し通せてると思っていただけに、二人の人にバレているという事にショックは否めない。



「えっと、あの、それは……はい」


「やっぱりね。まぁ前から薄々は気付いてた事だけどさ…」



フゥとひとつため息をつく先輩。


いつから知られていたんだろう。


あたしの行動はそんなに分かりやすかったのかな?


明は悠斗は気付いていないと言っていたけど、果たしてそうなのか。


ずっと一緒にいたんだから、悠斗や葵が知っていてもおかしくない。


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