伝わらない、伝えられない


「ホント、どこが良いんでしょうね…あたしにも分からないんですよ。
何度も、忘れようとしてるのに…」



複雑な感情があたしをかき乱す。


知られたくないって気持ちが大きいけれど、知ってほしいと小さく思っているあたし。


その狭間で押し潰されてしまいそうだ。



「なんで俺やお前の親友に吐き出さないんだよ。辛いんだろ?苦しいんだろ?
俺達は信用できないのか?」


「そんなことない!」



否定する思いに比例するように、ブンブンと何回も首を横に振る。



「じゃあ一人で抱え込もうとすんな!」



そう言って先輩はそっと抱きしめてくれた。



ずっと周りに打ち明けられなかった想い。


だって悠斗が葵を好きなのは見るからに明らかで…


だから諦めた方が良いって言われそうで不安だった。


もちろんそんなのはあたしの考えすぎかもしれないけど。


この大切な気持ちはあたしそのもの、あたし自身といっても良い位で…


拒絶されたらもう自分はどうすれば良いのか、きっと分からなくなるから。


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