伝わらない、伝えられない
「さて…晴れて恋人になった事ですし。キスでもしましょうか?」
「は、はい!?」
突然の『キスしましょうか』発言。
昔から突拍子のない奴だったけど、さすがに…
いやいやいやいや!
それはいきなり過ぎる!開いた口がふさがらないって!
夢でも見てるんじゃねぇよな?
頬をつねろうか一瞬迷った。
少しずつ葵がそんな俺へと近付いてくる。
ふわふわとした髪が屋上を吹き抜ける風によってなびく。
「好きなんだから…キス位できるでしょ?」
「あ、あぁ…」
やけに挑発的な葵の態度。
まさか葵からリードされるとは…
「ほら、早くしてみてよ」
そう言って目をつぶる葵。
やるしか、ないよな…
恐る恐る肩に手を置く。
その手が緊張で震えているのが分かる。